帰ってきた!いけちんのずれずれ草

12年間続いた、ずれずれ草が帰ってきた!

裁判ウオッチ②

つづき
そうは言ってもせっかく来て、
何も見ないで帰るのはいやだったので、
もう一つのチェックしていた刑事事件の法廷へと向かった。
中に入るとすでに審理が始まっていた。
罪名は確か窃盗。
丁度裁判長が被告人の氏素性を聞いているところ。
なかなかドラマのようにはてきぱきと運んでいなかった。

裁:今答えた住所はこちらで承ったものと違いますが
被:それはどこですか?
裁:大阪になっています
被:それは離婚した女房の実家です
裁:何で別れた奥さんの住所を答えたの!
  (ちょっと怒っている)
被:(バツが悪そうに)家らしい家に住んでいたのは
  そこが最後だったので
裁:いつまで住んでいたのですか?
被:3年くらい前(弁護士がクスリと笑う)
裁:3年も前の住所を答えなくてもいいでしょ!

いきなりこうした尋問が飛びこんできたのだから
これは面白いことになったと思った。
次に検察側の起訴状朗読。
おっ、これはドラマと同じだと思い注目していると
この検察官が結構若く、新人サンといった感じ。
私が法廷に入ってからこっちをじろじろ見ていて、
なにやら緊張しているようだ。
案の定朗読もチラチラこちらを時折みながら朗読するものだから
つっかえつっかえ、たどたどしい。
10分くらいの朗読だったが、
要は無職でふらふらしていた被告が
山谷でエンジンがかかっていた車の中に財布を見つけ盗み、
それを通行人に見られ逃げたが取り押さえられ、
駆けつけた警察官に現行犯逮捕されたのだが、
前科も何件かあり、初犯ではないので起訴されたということだった。
この起訴状の中に被告が山谷で知り合った
「金ちゃん」なる人物が出てくる。
きっと本名も分からず所在もわからないままなのだろう
事件とは直接関係無いものの山谷での生活では
「金ちゃん」に大変お世話になったと見えて何回か朗読の中で出てきた。
出てくるのはいいのだが、何しろ若いキリッとしたスーツを着た
検察官が真面目な顔で「金ちゃん、金ちゃん」と言うのだからおかしい。
それもたどたどしく、つっかえながら
「…き、き、金ちゃんのし、し紹介で…」
私の顔は笑いをこらえ軽くだが引きつっていたことだろう。
きっと検察官はそれを気にしてチラチラこっちを見ていたに違いない。

朗読が終わり罪状認否。
あっさり被告は認め次回の公判の日程を裁判長が弁護士と検察官に伺う。
えっもう終わりなの? 私が法廷に入ってそう15分くらいだった。
あっという間の裁判ウオッチデビューだった。

ほっとして法廷を後にしたのだが、昼飯を食べてないことに気づき
食堂は地下にあったので早速向かった。
地下には食堂のほかに売店や郵便局まであり、人通りは多かった。
また、接見所というところがありその入口には
若い弁護士?それとも記者?のような人だかりができていた。
売店にはさすがに法律関係の書籍が売っていたり、
特色を出していた。
肝心の食堂だが、公的機関の食堂は安いのが当たり前だと思っていたが
思ったより安くなかったことだけは覚えている。

裁判員制度が数年後始まる。
そのために見に行ったわけではないが、
それはそれとしてよい社会勉強になったと思う。
将来当事者として被告?原告?になって傍聴席の向こう側に
立つかも知れない。
できればもちろん立ちたくは無いのだが、
こうした世界をたまには覗いてみるのも悪くは無いと思った。