帰ってきた!いけちんのずれずれ草

12年間続いた、ずれずれ草が帰ってきた!

夏休み2010⑤(おまけⅡ)

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家から朝7時半前頃に
家族で自転車に乗り
武蔵川部屋に向かう。
自転車で10分程度の距離。
着くと窓から
体がぶつかる音と共に
鬢付け油のにおいが
漂っていた。
正面を入っていくと
すぐ前に稽古場が見える。
左には上がるところがあり
上がっていくと、
世話人らしき人が登場。
「何ですか?」
ずいぶんとぶっきらぼうだ。
『越ノ龍さんのご紹介で
 見学に来ました。これ皆さんでどうぞ。』
私の手には手ぶらじゃ何だから
差し入れのコーラ1箱がある。
「あ、そう。じゃあそこに置いて。
 私語はしない。携帯の電源を切って
 上がって。一番奥から座って!」
コーラのお礼も無く、そこに置けときたもんだ。
まぁこの粗雑な感じも角界らしい。

稽古場見学の座敷?に通されると
そこには元横綱武蔵丸がどっかと座っている。
前を失礼して、一番奥にすすみ
家族4人座る。
丁度越ノ龍が稽古中。
さすがにもの凄い迫力を感じると共に
真剣そのもので、師匠達の鬼気迫る
指導の声がまた一層の緊張感を生んでいた。
親方はご存知の通り理事長職を辞し、
病気療養に努めているせいか居ない。
細長い座敷の真ん中にある長火鉢の脇にある
座布団には誰も座っていない。
ただ脇には部屋付き年寄の面々がいて
弟子達に罵声なのか指導なのか
分からない言葉が飛び交っている。
しばらくすると幕内力士が徐々に姿を見せる。
部屋には4人幕内力士がいる。
雅山垣添武州山、翔天狼
後で聞けば、当然の事ながら
近い番付同士で稽古をし、
徐々に上の番付のグループに
取って代わる。
越ノ龍達の稽古が終わり次にその上のグループ。
最後は4人の幕内グループと言った具合だ。
やはり上位の稽古は場の雰囲気が違う。
立ち会いからして見応えがあるし、
あたる音もまた凄い。

若手の稽古の様子は、年寄師匠連からの
大変厳しいシーンも目の当たりにし、
中にはほとんど泣き声のような
嗚咽とも悲鳴ともつかない声を
あげている若手の姿も。
高いところから見ている身としては
何か申し訳なさも感じる。
しかし、元マネからすればやっている方は
全く関係ないらしい。
予約なしでもどんどん見に来て欲しいと言う。
近所の人がふらっと見に来ることも全然ありだそうだ。
結局約2時間ほどいたが、見学者は我々だけ。
子らも厳しい稽古をみて良い経験をしたと思う。

さて、これからちゃんこになるわけだが
勝手が分からない。
「あの~、ちゃんこは?」
なんて言えない。
どうしようかと思ったが、とりあえず外に出ようと
近くの公園で涼む。
このまま帰るか。と思った矢先。
越ノ龍から電話だ。
「今どこですか?用意してますからちゃんこ食べてって下さい」
あぁ良かった。
自転車できびすを返し、再び部屋に。
しかし、ここでアクシデントが。
稽古していた若手の一人が過呼吸になり
大変苦しそう。
「救急車呼べ!」の声。
「何番だ? 119?
 119だってよ!」
……本当に大丈夫かな?
救急車が来る間、外で待っている。
イイのかな?
お取り込み中にお預けを食った犬の状態で
何ともバツが悪い。
暑い中右往左往していると救急車が到着
しばらくして運ばれていった。
ようやく、「どうぞ入って下さい」のひと言がかかり
地下へ通される。
4人図々しく座ってちゃんこを食す。
前にはトンカツとカボチャの煮付け。
勿論これもちゃんこ番の手作り。
「ビールでイイですか?」と越ノ龍が私に振る。
「イイんですか」と私も応え、
若い行司の見習いさんから、
「どうぞ」とビールを注がれたが
グラスがない。
えっ、と思っていると。
「こちらで」と見習いさんが私の前に置いてある
丼を持って注いでくれた。
え~っこれで飲むの? さすが相撲部屋だ。
しかし、周りに若手が立って我々の食事を
囲むようにしている。
客人は上位力士と同じでそれらが食べ終わるまで
食べられず、おかわりなどの給仕もする。
分かってはいるが、囲まれてする食事は
初めてで何とも落ち着かない。
ちゃんこのおかわりも3回ほどして
食事も終わった。
とにかく美味しかった。
ごちそうさまでした。
最後は部屋前で越ノ龍と写真を撮って
後にする。
この時代、厳しい修行をする若い人を見て
凄いなぁと思う。
自分も好きだった相撲の本当の世界を
少しでも見られて良かったと思った。
今や相撲界は大変な状況だが
こうした姿を見るに、とにかく頑張ってほしい。

本当にありがとうございました。

(おわり)