帰ってきた!いけちんのずれずれ草

12年間続いた、ずれずれ草が帰ってきた!

一朶(いちだ)の雲

「誠に小さな国が・・・」で始まる
NHKのドラマ「坂の上の雲」が今日大団円を迎える。
足かけ3年をかけ放送してきたが、
そのこと自体が異例であり、事の大きさに感動を覚える。
冒頭の渡辺謙さんのナレーションは、
軽妙な感じで決して重たみはないものの、
説得力のある語り口で、妙に暗くならない。
また、昨年の第2部では同級生があるスタッフとして
エンドロールにその名を連ねていたので、
余計親近感がある。

よくよく調べてみると、この作品の映像化に関して
司馬遼太郎自身は生前一切認めなかったそうだ。
これだけの作品。映画にしろドラマにしろ
いろんなところから話があったが、
「満足な映像化が期待できない」
軍国主義を賛美する内容に陥りやすい」
というのがその理由だそうだ。
前者は現代のCGを持ってすればクリアできる。
後者は見方によっては確かに受け取られかねない。
私は原作を読んだことはないが、
新聞か何かで司馬先生は
「明治の日本人は本当に一朶(いちだ)の雲を目指し
 努力した。その結果、奇跡的に大国ロシアを破り、
 その功績が一人歩きしてしまい、神風だの神国だの
 言い始め、昭和の馬鹿たちが太平洋戦争を起こしてしまった」
という内容のことを後書きで書いていることを知った。
(元の文はもうちょっと気の利いた文であろうが、
 新聞では咀嚼してこんな感じで紹介していた。)
確かに日露戦争では以前のブログでも書いた
広瀬中佐もそう軍神第一号であるし、
乃木、東郷などは神様になってしまった。
東郷はまだしも、乃木さんには悪いが、
西南戦争では軍旗を奪われ、
二〇三高地では多くの兵を犠牲にしたのにもかかわらずだ。
何やらこの国の妙なイケイケドンドンを感じざるを得ない。
大体、ロシアに本当に勝ったのか?
確かに旅順戦は犠牲が多かったものの敵を駆逐し、
海では無敵バルチック艦隊を撃破した。
しかし、講和会議では戦力が枯渇していた日本の
足元を見られ、賠償金は取れず樺太も半分しか取れず
見方によっては勝利と言うより停戦、休戦会議にも見える。
もっとも奴さんも国内政情不安を抱えていたから、
遠く極東の地での戦争など
これ以上やりたくもなかったとは思うが。

神聖化し過ぎてしまった戦前の日本を反省しつつ、
一方で坂を登って行った先人の苦労を知ることは
今のこの国に通じるところ間違いはない。
一朶の雲を目指し、震災の復興にあたりたいモンだ。

一昨年からこのドラマを見ていると、子から
「このドラマなに?」
坂の上の雲だよ」
崖の上のポニョのパクリ?」

何ていい時代なんだろう。