帰ってきた!いけちんのずれずれ草

12年間続いた、ずれずれ草が帰ってきた!

桐と菊と桜とつつじ  3

なんだかんだで皇居見学は1時間とちょっと。
まだ午前中ながら少し疲れる。
最初に立ち寄った窓明館には戻らず
桔梗門にから「お帰りはこちら」となる。
だから売店のおみやげは
着いたときに買わないといけない。
見学から帰ってきたときには、
売店はクローズとのこと。
商売ッ気がない。
バスに戻り、次は昼食会場。
時間は11時半頃で丁度良い。
市ヶ谷のホテルで会席弁当のようなものが出される。
そこで神社の神主が、
「いけちんさん、いつもならここ(昼食)でいや、
もうバスの中で一杯引っかけるんですが、
次が防衛省なもんだから酔って入るわけにも行かず
今回はお酒が出ないんです。」
まぁトイレが近い私にとったらあまり飲まない方が
いいが、この昼食結構うまい。
お刺身もあったり、
なおの事これでお酒があればよりおいしいのに。
う~ん残念。
ただ、防衛省の見学が終われば
お酒が始まるらしいので、しばしの我慢だ。
まぁ、赤い顔して「見学させてくださ~い」
というのは確かに不謹慎だし、
ましてや防衛省。国を守る人たちが
頑張っている庁舎に入るのだから
こちらもちゃんとしないと。
でもさっき東郷神社で御神酒をいただいたが
あれは大丈夫か?

それはともかく午後1時過ぎに防衛省に到着。
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ここも平日であれば見学できる。
やはり皇居と同じくインターネットでも予約可能だ。

ここで驚いたのが、とにかく厳しい。
参加するにあたって、
住所と氏名と生年月日を事前に申し伝えた。
どこの誰が来たかをチェックするためだが、
当日も免許証や住基カードなど写真付きの
身分証明書を持参のこととなっている。
バスを降りるとまずは、届けた名簿順に並べられる。
それで受付まで歩く。まるで捕虜が連行されるかのようだ。
さすが軍隊。
そこで総勢60人弱の確認を1人1人行う。
それも職員1人がやるのだから堪らない。
どのくらい待たされただろうか?
年寄りが多いこのツアー、歩かされ待たされ
ちょっと気の毒だ。
ようやくチェックが終わり見学開始。
我々だけでなく、一般の見学者も少なかったがいた。
どうも地方から来た修学旅行風の高校生。
制服姿の3名と先生らしきお人。
もしかしたら自衛隊志望か?
案内する担当者も声を張り叫んで
きびきびしている。
ハンドマイクなどいらないくらい。
ずらずらと大きい2、3の庁舎を横切って、
奥へ奥へと進む。
進む道すがら、みんなから聞こえてきた声
「ここの大臣はだらしがないねぇ」
「まったく情けないよ~」
庁舎の人に聞こえるかのようにあちこちでこの会話が。
そして決まってこの会話のオチは、
「奥さんがしっかりし過ぎるとあーなっちゃうのかねぇ」
ナ●キパパ、頑張れ~。

一番奥まで来ると、
期待していた建物が目に入ってきた。
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そう、三島事件、古くは東京裁判の舞台となった建物だ。
もともとは士官学校として建造され、
大本営陸軍部、陸軍省参謀本部
戦後は東京裁判法廷、米軍司令部、
陸自東部方面総監部などに使用されてきた。
六本木にあった防衛庁をこの地に移転するにあたり
この敷地の中央に位置していた建物だが、
解体され、復元できるものは復元すべく
端っこの片隅で「市ヶ谷記念館」として
こうして見学者に公開されている。
完全な形での移築でないにせよ、
東京裁判の法廷に入れると思うと
ちょっとワクワクする。
外観の説明もそこそこに、「どうぞお入り下さい」
と言うや否や「待ってました」とばかりに入場。
三島もこの正面から入ったのか?
入ると正面の入り口扉があり中へくぐると大講堂。
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思っていた以上に暗い。
まずは15分ほどビデオを見せられる。
映像を見ながらガイドの女性が言うには、
裁判前にGHQからどこに立っても
影が出来ないように明るくすること。
というお達しがあったそうで、
今残っている既存の照明に加えて
天井から多数の照明器具を吊し、
それはそれは眩しい限り、
外国の記者たちは「照明地獄」
という表現をしたそうだ。
その臨時の照明は今はなく、
この暗い雰囲気は真逆であっても
余計に往時をしのぶには
充分すぎるほどの演出になっている。

ちょうどこちら側が被告人席
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東条や荒木、広田などが並んでいたところ。
彼らと同じ景色をいま共有している。
東条も何度この天井を仰いだことか。
そして向かい合う反対側に裁判官席。
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ウエッブ裁判長や日本無罪論の
インドのバール判事はこちらに座っていた。
挟まれるこの講堂の床には
キーナン検事や広瀬弁護士が
歩いていたのだろう。
聞くにこの床はほぼ当時のままの状態だそうだ。
案内の人が被告席側の上に掲げている地図を説明
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これは東京裁判で使われた地図と同じもの。
実際に使われた現物は無いが、
GHQからこの地図を受注した日本の地図メーカーに
2つ残っていたそうで、
その内の一つをこちらに展示しているらしい。
(同じものを全部で4つか5つ作ったそうだ)
確かにドキュメント映画「東京裁判」でも
この地図が出てきた覚えがある。
東京裁判の映画と言えば
印象深いのが広田が判決を聞きヘッドホンを外し
傍聴席の家族に視線を向けるシーンがある。
私も同じように被告人席のあたりから傍聴席を見上げる。
結構思っていたより近い距離だ、明るかったことを考えれば
きっと顔もはっきりとわかったはず。
文官として唯一極刑を受けた元首相。
家族は巣鴨に向かう目隠しされた
護送バスに手を振り続けたという。


〈つづく〉