なんだかんだで皇居見学は1時間とちょっと。
まだ午前中ながら少し疲れる。
最初に立ち寄った窓明館には戻らず
桔梗門にから「お帰りはこちら」となる。
だから売店のおみやげは
着いたときに買わないといけない。
見学から帰ってきたときには、
売店はクローズとのこと。
商売ッ気がない。
バスに戻り、次は昼食会場。
時間は11時半頃で丁度良い。
市ヶ谷のホテルで会席弁当のようなものが出される。
そこで神社の神主が、
「いけちんさん、いつもならここ(昼食)でいや、
もうバスの中で一杯引っかけるんですが、
次が防衛省なもんだから酔って入るわけにも行かず
今回はお酒が出ないんです。」
まぁトイレが近い私にとったらあまり飲まない方が
いいが、この昼食結構うまい。
お刺身もあったり、
なおの事これでお酒があればよりおいしいのに。
う~ん残念。
ただ、防衛省の見学が終われば
お酒が始まるらしいので、しばしの我慢だ。
まぁ、赤い顔して「見学させてくださ~い」
というのは確かに不謹慎だし、
ましてや防衛省。国を守る人たちが
頑張っている庁舎に入るのだから
こちらもちゃんとしないと。
でもさっき東郷神社で御神酒をいただいたが
あれは大丈夫か?
それはともかく午後1時過ぎに防衛省に到着。
ここも平日であれば見学できる。
やはり皇居と同じくインターネットでも予約可能だ。
ここで驚いたのが、とにかく厳しい。
参加するにあたって、
住所と氏名と生年月日を事前に申し伝えた。
どこの誰が来たかをチェックするためだが、
当日も免許証や住基カードなど写真付きの
身分証明書を持参のこととなっている。
バスを降りるとまずは、届けた名簿順に並べられる。
それで受付まで歩く。まるで捕虜が連行されるかのようだ。
さすが軍隊。
そこで総勢60人弱の確認を1人1人行う。
それも職員1人がやるのだから堪らない。
どのくらい待たされただろうか?
年寄りが多いこのツアー、歩かされ待たされ
ちょっと気の毒だ。
ようやくチェックが終わり見学開始。
我々だけでなく、一般の見学者も少なかったがいた。
どうも地方から来た修学旅行風の高校生。
制服姿の3名と先生らしきお人。
もしかしたら自衛隊志望か?
案内する担当者も声を張り叫んで
きびきびしている。
ハンドマイクなどいらないくらい。
ずらずらと大きい2、3の庁舎を横切って、
奥へ奥へと進む。
進む道すがら、みんなから聞こえてきた声
「ここの大臣はだらしがないねぇ」
「まったく情けないよ~」
庁舎の人に聞こえるかのようにあちこちでこの会話が。
そして決まってこの会話のオチは、
「奥さんがしっかりし過ぎるとあーなっちゃうのかねぇ」
ナ●キパパ、頑張れ~。
一番奥まで来ると、
期待していた建物が目に入ってきた。
そう、三島事件、古くは東京裁判の舞台となった建物だ。
もともとは士官学校として建造され、
大本営陸軍部、陸軍省、参謀本部
戦後は東京裁判法廷、米軍司令部、
陸自東部方面総監部などに使用されてきた。
六本木にあった防衛庁をこの地に移転するにあたり
この敷地の中央に位置していた建物だが、
解体され、復元できるものは復元すべく
端っこの片隅で「市ヶ谷記念館」として
こうして見学者に公開されている。
完全な形での移築でないにせよ、
東京裁判の法廷に入れると思うと
ちょっとワクワクする。
外観の説明もそこそこに、「どうぞお入り下さい」
と言うや否や「待ってました」とばかりに入場。
三島もこの正面から入ったのか?
入ると正面の入り口扉があり中へくぐると大講堂。
思っていた以上に暗い。
まずは15分ほどビデオを見せられる。
映像を見ながらガイドの女性が言うには、
裁判前にGHQからどこに立っても
影が出来ないように明るくすること。
というお達しがあったそうで、
今残っている既存の照明に加えて
天井から多数の照明器具を吊し、
それはそれは眩しい限り、
外国の記者たちは「照明地獄」
という表現をしたそうだ。
その臨時の照明は今はなく、
この暗い雰囲気は真逆であっても
余計に往時をしのぶには
充分すぎるほどの演出になっている。
ちょうどこちら側が被告人席
東条や荒木、広田などが並んでいたところ。
彼らと同じ景色をいま共有している。
東条も何度この天井を仰いだことか。
そして向かい合う反対側に裁判官席。
ウエッブ裁判長や日本無罪論の
インドのバール判事はこちらに座っていた。
挟まれるこの講堂の床には
キーナン検事や広瀬弁護士が
歩いていたのだろう。
聞くにこの床はほぼ当時のままの状態だそうだ。
案内の人が被告席側の上に掲げている地図を説明
これは東京裁判で使われた地図と同じもの。
実際に使われた現物は無いが、
GHQからこの地図を受注した日本の地図メーカーに
2つ残っていたそうで、
その内の一つをこちらに展示しているらしい。
(同じものを全部で4つか5つ作ったそうだ)
確かにドキュメント映画「東京裁判」でも
この地図が出てきた覚えがある。
東京裁判の映画と言えば
印象深いのが広田が判決を聞きヘッドホンを外し
傍聴席の家族に視線を向けるシーンがある。
私も同じように被告人席のあたりから傍聴席を見上げる。
結構思っていたより近い距離だ、明るかったことを考えれば
きっと顔もはっきりとわかったはず。
文官として唯一極刑を受けた元首相。
家族は巣鴨に向かう目隠しされた
護送バスに手を振り続けたという。
〈つづく〉