皇居を左回りのルートで走る。
和気清麻呂を後にして、竹橋まではフラット。
しかしそこからはダラダラと上り坂だ。
左に乾門が見えたところで、すでにキツイ。
初心者が犯す入りのハイペースに気をつけていたが、
やはり周りにつられてしまうのか
やや速いペースになってしまった。
腹の中ではトーストサンドが騒ぎ始めていた。
何やら吐きそうな感覚でもある。
まだ１㎞も走っていないのに参加したことを後悔した。
「う～む、苦しい」
声にこそ出さないがちょっとヤバイ。
すると係員が立っていて、
１㎞の表示カードを見せてくれた。
「ま、まだ１㎞か」また声に出さない心の叫びを放つ。
こんな苦しい１㎞は初めてだ。
何とかペースを崩さないように粘るも
周りに一緒に走っていた女子集団にも
徐々に置いて行かれる。
カラフルなウエアに身を包んだ彼女らに囲まれ
苦しいながらも気持ちいい雰囲気があったが
全くの孤独感に包まれてしまう。
そんなこんなで、内堀通りへ出て左折。
半蔵堀を見ながら苦しさを忘れようと走る。
やはり景色が変わるのは気持ちが入れ替えられるし
楽しく走れる。
女子に追いつこうという夢は諦め
ペースを落としながら走ることに。
まぁ遅くとも５０分以内にゴールできればいい。
右側を見るとイギリス大使館。
向こう側の道は江戸時代から変わらないままで
段差があったり、石がごろごろしたりと歩きづらい
道だったが、今もそうだろうか。
そんな心配をしながら確認する余裕はない。
半蔵門を過ぎる当たりから今度は緩やかな下りだ。
少しはホッとする。
しかし、レースとは関係ない他のランナーの速いこと。
ドンドン抜かされていく。
幸いにも「どけ～」とは言われなかったが、
その表情はかなりシリアスな人もいる。
もっとおおらかな気持ちで走れないのか？
自分の皇居だと思っているのか？
何と畏れ多いこと・・・
ペースは落ちたモノのリズムを取り戻してきた。
右に東京ＦＭや国立劇場を過ぎ、
社民党本部に最高裁の三宅坂を下りる。
もう後はほとんどフラットなはず。
国会前へ出ればすぐに桜田門。
ここでちょっと道が分からない。
コースは内堀通りを走るモノと思っていたが
ランナーは真っ直ぐ内堀通りを行く者と
左に曲がり桜田門をくぐる者と２通りある。
一体どっちへ進めばいいのか？
このレースに参加しているランナーは
ゼッケンを付けているが、前１カ所のみ。
後ろからはレース参加者か
一般ランナーか見分けが付かない。
分岐点に丁度係の者らしき人がいた。
が、しかし。その人の前を通るも何の指示もなし。
多分前を走っていたランナーは左に曲がった
と思うから、門をくぐってみようと左折する。
しかし自信がなかったので、仕方が無く
後ろを振り返りながらゼッケンを付けたランナーが
真っ直ぐか左かを見極めたかった。
でも後ろのランナーがなかなか分岐点まで来ない。
何回も振り返り、ようやく来たそのランナーは
何と真っ直ぐに進むではないか。
「え～ッ！オレ、コースアウトしちゃったの？」
と思いきや、そのランナーは係員に左折を促され
自分のコースが正しかったと再認識する。
いや～ヒヤヒヤした～。
桜田門をくぐり皇居外苑に入ったがすぐに内堀通りへ入る。
二重橋前を過ぎ、皇居前広場を
スローペースで歩を進める。
視界には新しくなったパレスホテルが見えてきた。
結構な高さを誇る建物になったが、
皇居のそばでこんな高い建物大丈夫か？
そんな心配をしながら走っていると
すぐにパレスホテルを過ぎる。
次に目標にするのは三井物産ビル。
むかしカルガモの親子が
内堀通りのクルマを止めてお堀に移動したのは
今は昔。若い人は知らないだろう。
まだ昭和だったか。
いよいよ気象庁も見えてきた。
やはり目標物があるロードレースはいい。
気晴らしにもなるし、
目標が次々に現れそこまでは行こうと思ってくる。
程なくゴールだが
身体はスタート時と同じように苦しい。
自分としてはゆっくりしたペースで走っているので
何とか持ちこたえられるが、タイムはどうだろう
４０分を超えてしまうだろうか。
ちょっと自分の時計を確認すると
３２～３３分位だ。
え、意外と思ったより速いじゃないか。
どういう風にゴールか分からなかったが
和気清麻呂像まで来ると係員が時計を持ちながら
ゼッケンを読み上げラインを引いた所にいた。
そこを通過してゴール。
手元の時計では３４分５４秒。
公式には３４分５２秒だった。
いつも４７００ｍを走ってそのくらいのタイムだったから
５㎞で同様のタイムが出たことは
意外や意外、かなり苦しいレース展開だったが
自分としては良いタイムが出た。
まぁ本当に目標としてるのは５㎞３０分だが
初めてのレースだからこんなモンでよしとしよう。
種目順位（男子５㎞）では２０人中１６位
総合順位（男女５㎞）では３４位中２７位。
１位の人は１７分台。ほぼ私の半分でゴール。
速い人は速いね。
参加賞のバームを像のそばで飲んでいると。
１０㎞の参加者もゴールをしてきて。
私の隣では、また年配の方が若いのをつかまえて
「君、何歳？」
「２５です」
「若いな、オレは６２歳だ」
「いやぁ、お若いですね」
「ハンデあってもいいよな。
こないだ＊＊＊大会出たっきり練習もしてないし、
いつもぶっつけ本番だよハハハ」
何で年配ランナーはこうも自慢したがる。
初めてのレースにしてはまぁまぁの結果に満足。
夏前にもう１回くらいは参加してみたい。
トーストサンドはまだ私の腹を満たしていた。
