帰ってきた!いけちんのずれずれ草

12年間続いた、ずれずれ草が帰ってきた!

ウソでウソを・・・

最近小説を読まなくなった。
読みたい本はいろいろあるのだが、
読む時間があまりない。
主に読む時間は朝の通勤時間。
前職ではクルマが多かったことから、
読めるはずもなく、
その辺からもっぱらラジオを聞いている。
ラジオを聞きながら本を読むというのは
なかなかできないモンで、
聖徳太子でない私には至難の技だ。

しかし、珍しく上の子が
『これすごく面白い』と本を薦めてくれた。
何か気になったので読んでみることに。
それがこれ
ミッキーマウスの憂鬱』
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新刊書ではなくちょっと前の作品らしいが、
読むと今は無き
シンデレラ城ミステリーツアーが出てきたり、
ちょっと前の舞台であるが、まぁまぁ面白かった。
ディズニーランドに派遣社員として就職した
若いちょっと変わった新人が主人公の話だ。
ディズニーランドの裏方の様子を暴露するような
内容かもしれないが、
あくまでもフィクションということになっている。
確かに、ディズニーやミッキーといった名前は
もちろん頻繁に出てくるが、
運営会社であるオリエンタルランド
本の中ではオリエンタルワールドになっている。
後書きにも書いてあったが、
実際に存在しない部署も重要な役回りで出てくる。
確かにフィクションに違いないが、
Qライン(アトラクションに並ぶ行列)など
ありそうな専門用語が飛び交ったり、
細部の裏方の様子のいくつかは
本当のことだと確信する。

ネタバレにならないように気をつけて
紹介するが、
要はディズニーランドが夢と魔法の国
と言っているように、
あり得ない世界をなんとか事実として
見せる努力を、裏方を含め
みんなで頑張っている姿が見て取れるお話し。
前半の主人公の立ち居振る舞いが
共感できず、なんだこいつ 
と言った感じにさせられるのがちょっと
読んでて辛かったのが気にかかったくらい。
また、本家米国のD社からのプレッシャーも
ちらほら盛り込まれ、説得力もある。
終盤はちょっと読みづらい部分もあるが、
冒険チックなハラハラするような
場面もあり、まぁ飽きる事はない。

問題は「中の人」なのだ。
そう、建前上居ないであろう
その中の人を巡る話と言っていい。
ビックコミックスピリッツ
ホイチョイ
気まぐれコンセプトで読んだ話だが、
何年か前のディズニーシーの
ニューイヤーカウントダウンイベントで、
ミッキーさんが水上バイクから落ちてしまったそうで、
youtubeでも見られる)
ある人が、オリエンタルランドの役員らと
会う機会があり、その事を話題にし
「中の人大丈夫だったんでしょうかネ?」
と言ったところ、
いい歳をした役員数名が一斉に
「中の人ぉ~?」と叫んだそうだ。
大人のウソは時にして滑稽。
そんな端から見ればあり得ないウソに
全力で取り組む姿は結構感動する。
確かにあの場所は、岩であって岩でない壁でも
リアリティを追求して岩になっている。
根底に夢と魔法の国という壮大なウソに
ウソを塗り固めてるのだから大変だ。
一つウソをつくと
いっぱいウソをつかなければならないとはこの事だ。
だけど、私にとってウソだと思っていたのが、
ホント(リアル)なものもある。
それはランドのウエスタンリバー鉄道
汽車で西部の開拓地の様子を巡るのだが、
アレが本物の蒸気機関車だとは思わなかった。
秩父でも真岡でも大井川でもなく
生まれて初めてのSL乗車が浦安だったとは思わなかった。
まぁ石炭でなく重油を使っているらしいが、
確かに多量の水を入れるところをよく見かけるものの、
あんなのはポーズだけとタカをくくっていたが
本当に蒸気で動いているとの事。
ちなみにシーで感動したのは何とかレイルウエイ。
れっきとした鉄道がテーマパークの中に
こしらえてあると思うと妙に感動する。
しかも、架線ではなく第三軌道から銀座線のように
電気を供給する。
ポイント部では暗くなるのだろうか?
シーでは意外や一番好きな乗り物かも知れない。

話は主人公を通して、建前で動く
今度行ったときには、
ウソの世界に堂々と埋没し
気持ち良く騙されてやるんだ、
という気にさせてくれる小説だった。