帰ってきた!いけちんのずれずれ草

12年間続いた、ずれずれ草が帰ってきた!

「めだか」と「らくだ」 中編

もう1人弟子に志らくがいる。
談春の弟弟子だが、一緒に二つ目になり
真打ち昇進は談春を抜かしてしまった。
その辺の件は「赤めだか」中でも載っていて
微妙な心理が表現されている。
今もそうらしいのだが、
入門当初よりこの二人はライバル関係にある。
調べると、「赤めだか」のあとから
対抗して志らく
「雨ン中のらくだ」という本を出した。
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これは自分(志らく)と談志のつながりを
いろんな落語を介して紹介している。
前者「赤めだか」は何やら賞まで獲った作品。
まさしく文芸書の完成度はあったが、
後者の「雨ン中のらくだ」は正直文章が下手。
というより、言いたいことをただ並べているだけの
文章で最初は読みにくさが目立った。
このブログと同レベルにある(笑)。
学歴を見れば高校中退の談春に対し
大学(日芸)に入った人(出てはいない)の本
とは思えなかった。
よく新潮社から出たもんだと思うが、
後半になって、あっしが慣れてきたのか
彼も筆が慣れてきたのか
だんだん面白くなってきた。
シネマ落語など新作に積極的に
取り組んでいる様子もある志らくだが、
本人曰く「古典落語が大好き」。
古典原理主義のあっしと話が合いそうだ。
しかし、彼は談志から同じ価値観をもっている。
と言われそうで、
その辺は合わないかも知れない。

印象的なのは、
談志は晩年「落語はイリュージョンだ」
と言っていたそうで。
あっしはあまり聞いたこと無かった。
というより「業の肯定」は哲学的な名言だが、
「イリュージョン」は至極当然のこと。
聞いたとしてもあまりピンと
こなかったかもしれない。
ただその解説がイイ。

『落語とは非常識なもの。
会話はまるで夢のように飛びまくるもの。
幻想に近い非凡な世界を描くもの。
「縁の下で飼っているキリンに
とっくりのセーターを着せた」というような
何だか分からないが強烈に面白いもの。
 それが落語だと談志は言います。』
  (本文より引用)


縁の下のキリンはよかった。
そいつにとっくりとは、
まさにイリュージョンだ。

世間的にはこの二人を
天才型の志らく、努力型の談春
言われているそうで、
また、狂気の志らく、正当の談春
今回この二つの本もまさしく
そんな作り方だ。
落語界のライバルというのは
こういう対極的な関係を指すことが多いなぁと
あらためて感じる。
志ん生文楽
談志に志ん朝
そしてこの志らく談春
ハチャメチャと本流である。
残念ながら寄席に出ていない現代のこの二人の
落語は聞いたことがない。
youtubeで二人の落語を聞きはしたが
どうも以前の落語のようで
今の様子が分からない。
落語会に行こうにもこの二人の
チケットはなかなか手に入りにくいらしい。
youtubeで聞いた限りでは
下手ではないけど・・・

つづく