帰ってきた!いけちんのずれずれ草

12年間続いた、ずれずれ草が帰ってきた!

『「の・ようなもの」 のようなもの』のようなもの

好きな映画は?と言われれば、
まず、浮かぶのが「の・ようなもの」(1981年)
518GZ6N81PL


(↑ 2回クリックしてようつべで見て下さい)
若手落語家を題材にした青春映画、
秋吉久美子が、今は石鹸の英語だが、
当時は中近東の国の名前が付いた
ト・・コ嬢役を演じ話題になったりもした。
最後の方で主人公志ん魚(しんとと)演じる伊藤克信が、
黄金餅よろしく堀切から日暮里までの
道中づけしながら夜中歩く。
道中づけというのは歩きながら地名や見た景色を
解説しながら、由緒を説明しながらの演出。
これが、本当にイイ。名シーンだ。
よく学生の頃、新宿から終電が無くなり
神田まで歩いて帰った事を思い出す。
道中づけはしなかったが、
途中新宿御苑内藤新宿)や四谷三丁目(岡・・有・・子)、
靖国神社大村益次郎像)など
道中づけのネタには事欠かない。

映画の解説などでは、堀切から浅草ということだが、
夜が明けて付き合っていた女子高生が
バイクで追いかけて再会するシーンは
間違いなく日暮里の富士見坂だ、浅草ではない。
ラストでは、兄弟子(尾藤イサオ)が真打ちに昇進し
みんなで船上ビアパーティを催す。
最初はみんなでバカ騒ぎだが、
それぞれが話し出し、
兄弟弟子の志ん菜(しんさい)から
「落語はつぶれる事は無いですかね?会社みたいに」
と聞かれた志ん魚が
「つぶれるかも知れないけど、その時は日本だってつぶれるさ」
こりゃ名セリフだ。
落語好きにとっちゃ、こんな事を言ってくれたら
もう嬉しくって溜まらない。
でも、今のこの国を考えるに
落語も日本もつぶれてしまった・・・
そして、尾藤イサオが歌う
「シーユーアゲイン雰囲気」という曲でエンディングロール。
これまたイイ曲だ。

パーティ会場から、一人、また一人と居なくなる。
そのシーンはエンディングにふさわしいが
本当に寂しい・・・
だけど、まったりとした時間は心地よさも伝わる。

タイトルの「の・ようなもの」って
落語を知ってる人ならすぐにピンと来る。
3代目金馬の「居酒屋」で出てくる、
「出来ます物(肴)は、
つゆ、(貝)柱、鱈昆布、鮟鱇のようなもの、
鰤にお芋に酢蛸でございます。へえ~い」
「じゃぁ、その『のようなもの』ってやつ一つくれ」
から来ている。

数年前に亡くなった森田芳光監督のデビュー作。
後から聞いたけど、
もうこれが最後の作品かもしれないと思い、
かなり思い切って作ったとの事。
実家の家を抵当に借金までして作った
まさに渾身の映画と言える。
そんな思いは充分伝わってくる。
森田監督も日大芸術学部に在学中は
落語研究会に所属。先輩には高田文夫も居たそうだ。
確か、高田さんが何かの雑誌で
「あいつは、下手くそだったねぇ」と言ってたのを思い出す。
映画の道に進んで良かった。
まぁ高田さんの落語を聞いた事あるけど
あの人は上手い。その辺の落語家なんてもんじゃない。

作品は、ちょっと異次元的な表現も加味しながら
若手二つ目落語家の様子が描かれる。
これがイイ。ホンにイイ。
それが、森田監督の没後、続編を作ろうと動き出して
現在制作中。
出演は松山ケンイチ北川景子らしく
なんか美女と美男の映画で別物になりそうだけど、
前回出演したメンバーも出るらしい。
撮影は終わったようで来年公開とのこと。
その名も「の・ようなもの のようなもの
今からホンに楽しみ。

アナ雪の続編なんて屁見てぇなもんだ。