帰ってきた!いけちんのずれずれ草

12年間続いた、ずれずれ草が帰ってきた!

ミステリー3題 中(最後の2行)

秋の読書の続き

2冊目は「イニシエーション・ラブ
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あっしはこの作品知らなかったが、
前田のあっちゃん主演で昨年映画化されていた。
映画は観ていないので、とりあえず原作本の話。
とにかく「ラスト2行でどんでん返し」というコピーに
ちょっとワクワクしていた。
舞台は80年代の静岡。
丁度あっしらの世代が登場人物。
たまに東京が出てきて「国電」とか「富士通のオアシス」とか
「男女7人」とか当時のキーワードも出てきて懐かしい。
sideA と sideB とに話は分かれ、
これも昔のレコードを彷彿させる。
その中の各単元というか項目の名前も
「君は1000%」
「Lucky Chanceをもう一度」
「夏をあきらめて」
ルビーの指輪
「SHOW ME」
など、当時の曲名を冠する粋な計らい。

しかし物語はどうって事無い恋愛小説の展開だった。
これホントにミステリー?という感じで進んでいく。
同世代のあの時代を経験した者として
うまくいったり、いかなかったりの男女の
恋模様が描かれ、やきもきしたり
浮気したりで、それはそれで楽しめたのだが、、、
殺されもしないし、ミステリー特有の犯罪的なにおいが
何一つ無いまま、終盤へ。
しかし、というかやはりというか
その最後の2行で大どんでん返しを喰らってしまった。
最初は何の事?という理解をしようにも思考停止。
そーゆーこと?
いやぁ面白かった。

こうした作品のトリック手法を叙述トリックと呼ぶらしい。
設定や人物像など説明をせず、
読者は特に違和感のないまま常識的に解釈しながら
スリードを誘ってあっと言わす。
正直言って汚い手段というのは言い過ぎかも知れないが
そんな印象を持ってしまう可能性もある。
古くからある手法のようだが、
アガサ・クリスティの「アクロイド殺し」が有名で
当時もフェアかアンフェアか論争を巻き起こしたらしい。
まぁ読者にしてみれば
読み進めて犯人が分かったところで
何の得にもならない。
素直にだまされてみるのも読者らしいのではないか。
前回紹介した「仮面山荘殺人事件」も叙述トリック
というか、次紹介する作品も同様で、
このシリーズ3題ともそのトリックを用いた作品ばかり。
今の時代、この手法が一番あっと言わせるのだろう。

(つづく)