帰ってきた!いけちんのずれずれ草

12年間続いた、ずれずれ草が帰ってきた!

今更ながら3.11~3

5時になった。
「では皆さんお気をつけて、またお会いしましょう」
と言い残し、帰途。
残った方はちょっと遠い人ばかり。
青梅もいれば柏もいる。
あきらめて泊まることも辞さずの構え。
実際に残ったほとんどは泊まることに。
建物を出ると代々木駅前はまだ混乱状態。
ラジオを聞きながら歩き始める。

まずは新宿を目指す。小田急の踏切はまだ締まった状態。
すでに警察が出動していて誘導したと思われ
待ちの車の列はない。
横目に見ながら新宿サザンテラスへ入る。
そこには雑貨屋のフランフランがあるが、
店はすでに閉店していた。
見るとショーウインドウに並べてあった陶器製品が見るも無惨
床に落ちていて粉々になっていた。
それを携帯カメラで撮る人も。
こうしている最中にも多くの人が死んでいる(いく?)事が
容易に想像される。目先の壊れ物などどうでもよい。
「何考えてんだか」とぼそっとつぶやく。
JRの跨線橋を渡りながら新宿駅の様子をうかがうも
やはりまだ電車は動いていない。
渡り終えたところで東急ハンズへ、実はここから
中に入ったのかぐるっと回って明治通りに抜けたのか
覚えていない。
おそらくはハンズに入り下へ下りて地上階から外へ出て
明治通りに抜けたと思うのだが、
ハンズの当日の店内が全く記憶にない。
何かしらざわめいているような、
懐中電灯やヘルメットを買い求めるような
そんな光景が想像されるのだが全く抜け落ちている。
明治通りを新宿3丁目方面へ歩き始めると
そこにはぎっしりと車列が動かない。
歩道はまぁ普通には歩けるが結構な人の量だ。
すぐにバス停で待つ人の列が飛び込む。
「来るわけ無いじゃないか、もう歩けよ」と声なき声。
珍しい公衆電話にも人の列。
有線電話は多少つながりやすいのか。
甲州街道まで出ると新宿御苑へ右折。
御苑トンネルも暗黒の闇に吸い込まれるように車列が続く。
トンネルに入って出てくる頃は何時だろう?
途中で大きい揺れが来たらヤだな。
などと余計な心配もする。
新宿通りに出ると世界堂がもう閉店していた。
しかし向かいに渡りとんこつラーメン屋は
こんな状況でも「いらっしゃいませ」と威勢のいいかけ声。
だが辞世の食にとんこつは選べない。
新宿周辺の時点ではどのように帰ろうかまだ迷っていた。
もちろん直線的に歩けば近いのだが、
もしかしたら途中で電車が動くかもしれない。
だが、家まで直線的に歩くと駅がほとんど無い。
だから、一旦四谷に出て水道橋あたりまで
電車の様子を確認しながら線路脇を歩くか、
家まで歩くことを前提に直線コースを選ぶか。
ラジオを聞いていても電車が動きそうにもないので
後者のコースを選ぶことに。
学生の頃終電が終わった後、新宿からよく帰ったものだが
思い出してみるとそれは店があった神田までだ。
荒川区の家まで新宿から歩いたことはない。
ちょっとした不安がよぎる。
そうと決まれば新宿通りから靖国通りへ道を変え
曙橋を目指す。

〈つづく〉